英語で数学

メルボルンで知り合った日本人の友人知人や,教育熱心ぽいアジア系ママ友などから、何度かこんなアドバイスをいただいた。

「(日本から来たなら)数学はきっと子供たちの得意科目になるよ」

ブログなどでも目にしたことがあったが,どうやら数学はオーストラリアのカリキュラム進度が日本に比してのんびり気味で,日本から転校してきた子供にとっては簡単に感じる,ということのようだ。

 

子供たちが学校に通い始めてまだ数週間。きっと学校では,先生や友達が何をやっているのかすらよく理解できずにいる状態だろうから,通うのが嫌にならずに楽しく1日過ごしてこれたら大成功!やったね!と励ますことを最優先にしていて,何を習ってきたのかなど学習面については完全に放置しきっていた。今は遅れたとしても,慣れてから少しずつ追いつけるようにサポートすればいいだろう,と。加えて,授業内容などについてこちらから積極的に聞いてしまうと,「わからないんだ」と口に出すことでより自尊心を傷つけてしまいそうだしフラストレーションも溜まるかもしれないし,などと思って,敢えて私からは一切聞かないように心がけていた。

しかしある日,長男が「明日mathsのテストがあるんだけど,授業ではボクが習ったことがない難しい範囲をやるし,しかも英語だし,先生が言ってることが何にもわからない。テストも全然自信がない,ごめんなさい」と悲しそうな顔で打ち明けてきた。かわいそうに・・・あれ?数学だけは楽なんじゃ?と思いながら,長男が授業で渡されたというプリントを見て,思わず唸った。二乗の関数や放物線のグラフ,しかも単なる答えを導き出す問題じゃなくて,様々な角度から質問が設定されている。・・・うーん,私もかなり忘れてるとはいえ,これ,難しい!!

 

少し説明が必要なのだが,長男は普通の中学校に合流する前に,まずは英語の語学学校に通わされている(この経緯もいろいろあったので,後日文章にまとめようと思う)。その語学学校では中学・高校生(こちらでは,セカンダリースクールという中・高が一緒の学校,というシステムが一般的らしい)対象のクラスに所属していて,スムーズにセカンダリーの授業に入っていけるようになることを目的に,文学,数学,社会や理科などを(もちろん英語で)習っているらしいのだが,何せそこは語学学校,クラスには12歳~16歳くらいまでの生徒が一緒くたに同じ授業に取り組んでいるという。

そしてそのプリントの範囲は,私が日本から持ってきた中学生用の数学の参考書に中3レベルとして載っていたが,問いに正確に答えるには更に深い理解と応用力が必要そうだった。難しいが,設問がなんだか面白い。

 

少しばかり私の闘争心?に火がついて,その晩,長男には関数とグラフについての最低限の知識をたたき込み,翌朝学校に送り出した・・・が,もちろん一夜漬けで何とかなるものでもなかった。

そこで,私も英語の勉強中だし,数学を英語で勉強するなんてこの機会を逃すと一生ないだろうし,何より好奇心に駆られて,この日から,長男と一緒に,こちらの中1の数学の教科書(通う予定のセカンダリーが貸してくれている)を使って勉強を始めることにした。

厚さ3cmを超える分厚い教科書

取っつきやすいかなと思い,図形の章からスタートしてみた。その章立てからし目から鱗。まず多角形を学び,その次に三角形,四角形と進んでいく。三角形にしても,まずは特徴のない三角形,その次に二等辺三角形,正三角形。四角形も,特徴のない4辺からなる図形スタートで,平行四辺形,長方形,正方形・・・悉く一般的なものから特徴的なものへと学びが進んでいくようになっていて,論理的で興味深い。

まず正三角形,正方形という,条件が整いまくった形から入っていくのが何となく日本的かなあと思ったりして(これはあくまで個人的な感覚で,実際の日本のカリキュラムの進み方は全く把握していないが),こんな些細なところでも文化的な違いを感じるとは。

 

それにしても,子供のフレッシュな脳の吸収力にはいつも驚かされる。私は様々な図形の名称を覚えるところであっという間につまづき四苦八苦しているが,長男はスイスイ。置いていかれないように努力せねば。